読書メモ:バーナード・レジンスター『生の肯定』

バーナード・レジンスター/岡村俊史/竹内綱史/新名隆志【訳】(2006→2020)『生の肯定——ニーチェによるニヒリズムの克服』法政大学出版会

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レジンスターはニーチェの「力への意志説」を〈自分のやりたいこと(1階の欲求)をやっているときに直面する抵抗を克服したいという2階の欲求〉として理解し、この欲求の追求こそが苦悩を意味づけ、人生を生きる価値/意味があるものとして生きることができるようになる、とする。これってかなり世俗的に翻訳すれば 人間はチャレンジングな課題をやることがよく生きることなんだぜ(もちろん悩むことはあるだろうけど、悩み事のない人生なんて退屈でしょ?)みたいなこと言ってる。

実際のところニーチェは熱心なエマソン読者だったらしいし(ローゼンハーゲン『アメリカのニーチェ』)、自己啓発との相性の良さは「超訳」シリーズとかが示しているところなので、読まれるべき仕方で読まれているとも言えるじゃんという。

あとは、力への意志説のレジンスター解釈では、逆説的な帰結として 人間は力への意志の発揮のためにむしろ進んで抵抗/苦難を求めるようになるよね ということが言われるけど、さらにそこから、ニーチェが なぜ人間は残酷な行為(他者に苦痛を与えること)をそれ自体を目的として行ってしまうのか という心理現象の説明をしている[と解釈する]ところも面白かった:「なぜなら、残酷さは克服すべき抵抗を保証する、つまり自分に加えられる苦悩に抵抗せざるをえない他者の意志というものを保証するからである」(p241)。

241 私たちが他者にしてもらいたいと思っていることを実際に当人がするような場合でも、それがたまたまその当人自身も同じことを欲していたからなのだとすれば、そのような相手は何の抵抗も示さないのであり、私たちが力の感情の増大を経験することもない。それに対して残酷さはそうした抵抗を保証する。なぜなら、残酷さは克服すべき抵抗を保証する、つまり自分に加えられる苦悩に抵抗せざるをえない他者の意志というものを保証するからである。

ニーチェ先生によるサディズム早わかり。抵抗の克服と逆説的に苦難を要求するから残酷。というか、人間本性としてそうした欲求があるということを仮定すれば(人間はチャレンジングなものに飢えている)、なんというかジャンプ漫画とかの少年漫画は青少年に対してそうした欲求の発散と解消方法の教育を行う機能を持ってるよなあ ともおもた(これは与太話。)

序論
第1章 ニヒリズム
第2章 方向喪失の克服
第3章 力への意志
第4章 絶望の克服
第5章 永遠回帰
第6章 ディオニュソス的知恵
著者等紹介